小説の墓場

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「ゆいレール」は続くよどこまでも ㉕

 

この島なら誰も私を知らないから。

なんの「つて」もないまま沖縄に来た。

とりあえず、ゆいレール壺川駅近くのウィークリーマンションに住むことになった。

贅沢は言っていられない。

近くにスーパーもあるし、レンタルビデオ店もある、おまけミスドまであった。

 

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早速アルバイト情報誌で仕事を探した。

ちょうど大型免税店が完成するらしくスタッフを大量に募集していた。

伊勢丹での販売経験がある私はもちろん採用となった。

 

履歴書には「惣菜売り場」ではなく「ファッションフロアー」に、

本当は「さば」だけど「バック」の最多販売記録を持つ、

に変えておいた。

ついでに三十三歳も二十八歳に「さば」を読んでおいた。

 

伊勢丹のネームバリューは効果テキメン、

私はすっかりドラフト一位で人気ショップのプラダに配属された。

 

しかし「さばの味噌煮」と「プラダのバック」は当然ながら違いすぎた。

 

結局、高校生のアルバイト以下の時給では生活すらしていけないので

プラダとは決別した。

三ヶ月と短い期間だったけど

M字型に禿げかけているサブマネージャーが送別会まで開いてくれた。

 

その後はいろいろ仕事をしてみたけど

結局、時給がいいこのコールセンターに落ち着いた。

実家に帰ろうとは思わなかった。

今さら帰っても、この歳では仕事もないし、友達もいないから。

 

沖縄での生活は楽しかった。

私はリセットできたのだ。

いろんな飲み会やらパーティーやらにもすすんで参加して、

新しい友達もどんどん増えていった。

 

しかし、その頃から私はまた「うそ」で固められていた。

誰も私を知らないのをいいことに。

 

「なぜ沖縄に来たの?」

「海が好きだから」(ほんとは夜逃げ同然、もちろん泳げないし、この歳で日焼けは禁物)

 

 

「仕事は?」

「免税店でバリバリ働いていたけど飽きたから辞めた」(ほとんどクビ同然でした)

 

 

「彼氏は?」

パイロットをしている」(もちろんいない)

 

 

「歳は?」

「三十三歳」(本当は三十六歳。「さば」も今では三つまでにしている)

 

 

もう本当の自分を見失っていた。

 

私はいつも「うそ」をつく。

もちろん二律背反(*5)どうこうの話ではない。

 

東京で生活していくうちに少しずつ「うそ」をつくようになっていった。

そのままの自分が嫌いだった。

自信がなかった。

 

そんな小さな「うそ」でたくさんの物を失くしてしまうのだけど、

それさえも失くしたくないから私はまた「うそ」をつく。

 

 

「お昼、何食べようか?」

「そういえば武田さん、ブログって知ってますか?」

と彼女は島根か鳥取だったかの移住者で、

年齢(さばの方)も近いので一緒にランチに行ったりする仲だ。

 

「聞いたことあるけど、よく知らないわ」

「おもしろいですよ。日記つけるみたいで」