小説の墓場

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「ゆいレール」は続くよどこまでも ⑳

午後十時の閉店後、帰り支度をして従業員出口に向かう、

やっぱり立ち仕事は足腰が痛いし疲れる。

 

「マネージャー、おつかれさまです」

 

とベテランの女性スタッフに声をかけられた。

彼女はこの免税店の販売女王や。

 

「最近、元気ないですね」

 

「そうか? 俺はいっつも元気やで」

 

「奥さんに逃げられたからですか?」

 

「げっ! なんで知ってんねん、ここの噂のまわる速さは牛丼屋みたいな速さやな、

並一丁! はいお待ち! はやっ! て、なんでやねん!」

 

あんまりうけへんかったな。

大阪の「のりつっこみ(*4)」はちょっと高度すぎたんやな。

 

「お前はこれから帰るんか?」

 

「これからバイトでーす」

 

「これからってもう十一時やぞ」

 

「明日は遅番なのでこれから朝まで働きまーす」

 

「なんで稼ぎ頭のお前がバイトなんかせなあかんねや?」

 

「いろいろとあるんですよ」

 

「まあ、ええんやけど。ってゆうか、お前凄いな、俺とそんな歳も変わらんやろ。

しんどないんか?」

 

「失礼ですねー。そんな歳じゃないですよ。

けどバイトのこと、他の人には言わないで下さいね。お願いしますよ」

 

「わかった、わかった。そや、そういえばこないだラーメンもろたで」

 

「ちゃんとお金入れといてくださいよ。三〇〇円!」と彼女は笑う。

 

「そうそう、一〇〇円玉を三枚って、一〇〇円やろ!」

 

「・・・・・・(汗)」

 

そして彼女は自転車に乗って颯爽と国際通り方面に向かって行った。

せやけど俺が元気ないのばれてんのかな。

 

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あれから四ヵ月ちょっとが経つ。

妻と息子はゴールデンウィークもこっちへは来んかった。

電話だけや。

飛行機代がもったいないからって、ネットで探せば往復二万円で来れるやん。

 

何年かぶりの一人暮らしも楽しいのは初めの三日だけや。

ベランダからの景色も一人で見ててもしょうもない。

休みの日に海になんて一人で行ってもおもんない。

ビーチパーティも一人ではできひん。

 

おもんない。

 

俺は家族と離れて何しとんねん。

仕事辞めて俺も大阪帰りたい。

だけど俺、もう四十二やし。