小説の墓場

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「ゆいレール」は続くよどこまでも ⑱

奥武山公園駅(おうのやまこうえんえき)

総合運動公園である奥武山公園の前に建つ駅。

 

陸上競技場、野球場、プール、テニスコート弓道場、多目的広場があり、

那覇まつり、産業まつりの会場、那覇マラソンのスタート地点として

県民にとって馴染み深い施設である。

 

緑が豊かで、散歩や休憩、ジョギングするにもいい場所である。

駅到着時の車内チャイムは、沖縄の童謡「じんじん」を編曲したものが流れる。

 

 

奥武山公園駅における、藤堂仁(大阪府堺市出身、42歳)の単身赴任編

早朝の六時、ようやく白み始めたゆいレール奥武山公園駅のホームに立つ。

一〇分そこそこの通勤時間。

ムースもスプレーもいらんようになった頭に

寝ぐせがついてないか窓にうつる自分を見た。

もちろん寝ぐせがつくほど髪は残ってない。

 

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俺の仕事場がある「おもろまち駅」につくと階段で地上に降りる。

ゆいレールの駅はほとんどが三階建てで、二階部分に改札があり、

三階がホームである。

各駅それぞれエスカレーターやエレベーター、階段がある。

 

「どっこらしょ」

 

こんだけの運動で息があがる。

俺も歳やな、もう四十二歳やからな。

 

駅の二階部分から巨大免税店の華やかな入り口までは広いテラス状の連結通路でつながってる。

しかし俺ら従業員は目立たんように連結通路のちょうど真下の一階部分に

ひっそりとある、まるでスパイ映画の秘密の扉のような従業員入り口から

セキュリティカードと暗証番号7878(ナハナハ)で入ることになってんねや。

 

三年前、この巨大免税店ができるときにスカウトされた、

いわゆるヘッドハンティングや。

 

大阪の阪急百貨店のファッションフロアーのチーフをしてた時に声がかかった。

「沖縄に日本一大きい免税店ができるからマネージャーで来てくれないか」ってな。

 

破格の待遇やし、なんちゅうても「日本一」が気に入った。

俺はすぐその気になった。転職や、と。

 

妻は「暑いから嫌や」と言ってたけど

「ヴィトンとかプラダもあんねんて、社割(*1)もいけんのちゃうかなー」で

コロリと寝返った。

当時まだ三歳やった息子も、多分喜んでたはずやけど。

 

 

沖縄に来て、始めの頃は楽しかった。

海も近いし、空気もうまい。なんせ暖かい。

大阪の堺に住んでた頃とは比べもんにならんぐらい環境はよかった。

 

仕事が休みの時は海辺でバーベキューもした。

こっちの人は「ビーチパーティー」と呼ぶらしい。

妻も息子も喜んどったし、俺もここでがんばっていこうと思うとった。

 

その頃は沖縄に永住するつもりやったんや。