小説の墓場

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「ゆいレール」は続くよどこまでも ⑨

私は結婚後、憧れの場所であった那覇新都心の大型免税店に転職した。

 

この一万㎡もある大型免税店は世界の超一流ブランド店が出揃い、

洋服や宝石、最新のコスメなど、

世界の高級ブランド品を国内に居ながらにして免税価格で買うことができる。

 

それを目当てにして毎日たくさんの観光客が来店する。

三階建ての館内はエアコンで適温に調整され、

足元にはふかふかの絨毯がひきつめられ、

ほのかにいい香りが漂い、

高級シャンパンが飲めるバーカウンターや

世界各国の料理が提供されるレストランもある。

 

高級感の固まり、そう、ラグジュアリーなのだ。

 

そんな中、スタッフは華麗に振る舞い、そして裏では慌ただしく駆け回る。

 

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この大型免税店のオープン時には大量のスタッフが募集された。

 

私は前職で販売経験があるのでなんとか採用されたのだが、

島から一歩も出たことがない私は全国から集まる腕利きのスタッフたちに

圧倒されっぱなし。

 

それは出来高制の給与システムがラグジュアリーな場所を戦場へと変貌させるから。

 

オープン当初のスタッフには銀座のブティックから転職してきた人や、

大阪の阪急百貨店でチーフをしていた人、

伊勢丹でバッグの売り上げ記録を持つ人などなど。

とにかく名だたる強豪が集結した職場だった。

 

そんな歴戦の勇者たちの販売能力はすごい。

ほめちぎって買わせる、大阪弁を駆使し笑わせて買わせる、究極は押し売る。

 

ただ憧れだけで、

「いつも元気なこと」程度の販売能力しか持ち合わせていない私の

70キロ近くはあった体重は入社一ヶ月で50キロ台になっていた。

 

数ヶ月が過ぎると出来高制の給与システムがライバル達を振り落としていった。

 

ここは沖縄、当然お給料のベースは低い。

 

出来高を取れず基本給だけだと生活もままならないほどのお給料しか稼げない。  

 

全国各地からやってきた「ないちゃー(*2)」や、

一獲千金を狙って入社した「うちなーんちゅ」もほどなくここをあとにしていった。

 

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この戦場はスタッフの入替わりも激しい。

さすがは外資系の会社、まさしく弱肉強食の世界。

 

強力な販売能力を持つ者は人気ブランドショップに配属され、

基本給の数倍をはるかに超える出来高を稼ぎ、さらに出世していく。

 

一方、販売能力が低い私などは基本給のみで不人気のブランドショップに左遷され、

見限られると退社勧告を受ける。

 

その恐怖の退社勧告、通称レッドカードを受けないように

最低ノルマだけはクリアできるように誰もが必死なのだ。

 

まだ数えるほどしかお見かけしたことはないが、

「おしゃれ」で「イケメン」で「ちょい悪」らしい外国人社長は冷血なのである。