小説の墓場

「ゆいレール」は続くよどこまでも ⑤

インフォメーションカウンターにも、ちらほらとお客様がやってきた。

たいていは同じ質問ばかり、

「トイレはどこですか?」とか

「レンタカーの受付場所は?」とか

「タクシーの乗り場は?」

ゆいレールはどこから?」などなど、

すっかりベテランの私は、どの質問にも的確に返答する。

もちろん得意の「愛想笑い」も忘れずに付け加えながら。  

 

沖縄には年間五百万人を超える観光客が訪れる。

そして沖縄を好きになり、移住してくる人数は年間約二万人といわれている。

多くの移住者は定住を目的に移住するものの、

三年以内にはそのほとんどが内地(*34)に戻るともいわれている。

希望する仕事に就けなかったり、沖縄生活に慣れて新鮮味がなくなったり、

収入が少ないため生活が成り立たず内地に戻る人も多い。

 

f:id:furimoon:20161205192234j:plain

 

 

相談をしながらランチを選ぶ。その相談相手が決めた食券を買う。

 

「うり、天ぷらうどん、あちこーこーどー(*35)」とオバァ。社員食堂は安くて早い。

 

飛行機から降りてきたCA(*36)達は、

ここぞとばかりに空港内のレストランフロアーにある沖縄料理店に駆け込む。

千円も二千円もする、沖縄そばセットやチャンプルーセットと食べたりなんかする。

 

f:id:furimoon:20161205192355j:plain

 

短大で私は英米文学科に属していた。

少しだけ大きな夢だったけど将来は英語を使う国際線のスチュワーデスになりたい、

なんてことも夢見ていた、ちょっとだけ。

今ではもうすっかり英会話なんてできやしない、片言の島言葉ならわかるけど。

 

すっかりぬるくなった私のイメージとはずいぶん懸け離れた、

その非関西風の天ぷらうどんをすするとメガネがくもる。

今月はパーマをあててヘアカラーもしたから使い捨てコンタクトを買う余裕が無い。

旧モデルの携帯電話が震える。

青色のランプが点滅する。メールだ。

メールは短大時代の大阪の友達からだった。

彼女は大阪で派遣のOLをやっている。

お気楽に働いて給料は沖縄で働く私より数段に良い。

彼女は有給休暇を利用して、

ちょっと海外旅行に行ったり、

ちょっとはりこんでバレンシアガのエディターズバッグを買ったり、

行列の出来るカフェで、ちょっと並んでまで雑穀米を使った、

ちょっとヘルシーで、

ちょっとしたサラダが付いて1200円の、

ちょっと高価で、ちょっとおしゃれなランチを食べたりする。

 

沖縄の県民所得は全国最下位、

東京との所得格差は二倍以上と社員食堂にあるテレビから女子アナウンサーは、

ちょっと「かみ」ながら言う。

 

お気楽OLからのメールは

 

「友達が沖縄に移住したから、そっちで友達になったってなー。

いろいろアドバイスしたってやー」

 

とその友達とやらのメールアドレスと携帯番号を送ってきた。

月額315円はかかっていそうな派手派手しいデコメ(*37)で。

 

休憩時間が残りわずかなので急いで残っていた麺とぶよぶよした天ぷらをかじる。

 

「財布の中身」と綿密な相談の上、決定した二百円の天ぷらうどん。

 

都会のお気楽OLや高給取りのCAみたく優雅なランチは沖縄の給料では、

ちょっと無理なのだ。