小説の墓場

「ゆいレール」は続くよどこまでも

「ゆいレール」は続くよどこまでも ㉗

二ヶ月が過ぎ、すでに常連の私は今日も青い会員証をだしていた。 「狼少女の告白。」を開くと右下にコメント《1》とある。 私は小学五年生のときに一度だけクラスの男子にラブレターをもらった、 あまり好きな男子ではなかったけど異常なほど胸がドキドキし…

「ゆいレール」は続くよどこまでも ㉖

仕事は夜九時に終わる。 遊興費が生活費を圧迫しているので、ゆいレールには乗らない。 美栄橋駅から壺川駅までの四駅分歩く。 時間にして四十五分くらい。 58号線沿いを歩き、泉崎のバスターミナルのところで330(*6)沿いへ。 道中にスーパー「かねひ…

「ゆいレール」は続くよどこまでも ㉕

この島なら誰も私を知らないから。 なんの「つて」もないまま沖縄に来た。 とりあえず、ゆいレール壺川駅近くのウィークリーマンションに住むことになった。 贅沢は言っていられない。 近くにスーパーもあるし、レンタルビデオ店もある、おまけミスドまであ…

「ゆいレール」は続くよどこまでも ㉔

私は生まれ育った栃木の高校を卒業して、すぐ就職した。 憧れの東京。 伊勢丹の惣菜売り場が職場だった。 田舎者だった私は朝から晩までよく働いた。 稼いだお金はすべて「あか抜ける」ために使った。 ボディコン(*1)に身を包み、 カンツォーネが流れる…

「ゆいレール」は続くよどこまでも ㉓

壺川駅(つぼがわえき) 奥武山公園から国場川に沿うようにレールがカーブする絶景ポイント。 駅のすぐ近くに那覇市中央郵便局がある。 駅下から国場川に架かる歩行者専用橋で奥武山公園に入ることができる。 駅到着時の車内チャイムは、沖縄民謡「唐船ドー…

「ゆいレール」は続くよどこまでも ㉒

右手には奥武山公園内に建設中の野球場が見える。 なんか完成したら巨人が春季キャンプに使うらしい、ふん! 俺は阪神ファンじゃ。 奥武山公園駅に着く。 車内に軽やかな沖縄民謡が流れる。 こんなん、いっつも流れとったかいな。 ホームに降り立つと携帯の…

「ゆいレール」は続くよどこまでも ㉑

「藤堂マネージャー、ちょっとよろしいですか?」 コンビニのゴーヤチャンプルー弁当を苦々と食べとったら、スタッフ数人が集まってきた。 なにやら販売成績の悪いスタッフがこのままではクビになるから助けてやってほしいと。 私達の売り上げをまわすから、…

「ゆいレール」は続くよどこまでも ⑳

午後十時の閉店後、帰り支度をして従業員出口に向かう、 やっぱり立ち仕事は足腰が痛いし疲れる。 「マネージャー、おつかれさまです」 とベテランの女性スタッフに声をかけられた。 彼女はこの免税店の販売女王や。 「最近、元気ないですね」 「そうか? 俺…

「ゆいレール」は続くよどこまでも ⑲

「マネージャー、おはようございます」 と売り場へと続く廊下ですれ違いざまに 大阪独特のイントネーション(*2)で挨拶された。 「おう! おはようさん。今日もがんばれよ」 と声をかけたんは、先日俺が面接して採用した、 大阪出身、正確には兵庫県の大…

「ゆいレール」は続くよどこまでも ⑱

奥武山公園駅(おうのやまこうえんえき) 総合運動公園である奥武山公園の前に建つ駅。 陸上競技場、野球場、プール、テニスコート、弓道場、多目的広場があり、 那覇まつり、産業まつりの会場、那覇マラソンのスタート地点として 県民にとって馴染み深い施…

「ゆいレール」は続くよどこまでも ⑰

帰りにいつもの居酒屋に行く。 一人で部屋に帰って夕食を食べる気なんてなれなかったし、 なんといってもこの居酒屋のヘチマ? ナベラー? の味噌煮みたいなヤツが おいしかった。 東京にいたときはお酒なんて飲まなかった。 次の日の仕事に支障をきたしても…

「ゆいレール」は続くよどこまでも ⑯

三ヵ月が経ち、ようやく仕事にも慣れてきた。 大変だったのが五十人程度いるスタッフの名前を覚えることだった。 沖縄には聞きなれない名前や同じ苗字が多く、すべて紙に書いて覚えた。 所長やスタッフ達からは苗字より名前で呼べば良いといわれたが、 職場…

「ゆいレール」は続くよどこまでも ⑮

沖縄にはいわゆるコールセンターが多い。 コールセンターとは顧客への電話対応業務を専門に行う事業所だ。 簡単に言えば企業の問い合わせ窓口みたいなものだ。 苦情、各種問い合わせ、注文などの電話を受ける(インバウンド)と 新規顧客の開拓業務やマーケ…

「ゆいレール」は続くよどこまでも ⑭

メジャーリーグやハリウッド映画が大好きで 五度にもわたる入社試験や面接をパスして入ることができた衛星放送の会社。 大好きなそれらには直接は触れることはなかったが、 営業マンとしてまずまずの充実感はあった。 とにかくこれといって「得意なもの」や…

「ゆいレール」は続くよどこまでも ⑬

小禄駅(おろくえき) 駅の東側に市営住宅、西側には大型ショッピングセンターがある。 ゆいレールの開通で利便性がよくなり、区画整理された街には、 色々な店舗や飲食店、ビジネスホテル、学校、福祉施設なども充実。 駅には、タクシーや自家用車の乗降場…

「ゆいレール」は続くよどこまでも ⑫

午後もやっぱり汗まみれで過ぎ、今日は早番だった私は夕方五時に退社する。 午前八時から午後五時までが早番で午後一時から午後十時までが遅番。 午後一時から五時までの早番と遅番のスタッフが入れ替わる時間帯に、 昼食や休憩を取るシステムになっている。…

「ゆいレール」は続くよどこまでも ⑪

ここは大きな施設なのだが社員食堂がない。 更衣室の隣に広い休憩室があるだけでスタッフはここで食事や休憩をとる。 別に休憩時間内なら外に出て食事してもかまわないのだが 基本給しか稼げない私はもちろん家で作って持ってくる。 更衣室で濡れてやたらと…

「ゆいレール」は続くよどこまでも ⑩

朝の七時半から 「おしゃれ」で「イケメン」で「ちょい悪」とは正反対の、 やたらと明るく元気で頭がM字型に禿げ上がっているマネージャーの 大阪弁での朝礼が始まり八時からの開店となる。 来店する客のほとんどは日本人観光客だが、 ここ最近では中国人や…

「ゆいレール」は続くよどこまでも ⑨

私は結婚後、憧れの場所であった那覇新都心の大型免税店に転職した。 この一万㎡もある大型免税店は世界の超一流ブランド店が出揃い、 洋服や宝石、最新のコスメなど、 世界の高級ブランド品を国内に居ながらにして免税価格で買うことができる。 それを目当…

「ゆいレール」は続くよどこまでも ⑧

赤嶺駅(あかみねえき) 両側に大きく広がる自衛隊の基地を見ながら駅に到着する。 日本最南端の駅。 糸満市、豊見城市など、本島南部への入口になっているため、 路線バスやタクシー、自家用車から、 ゆいレールへスムーズな乗り継ぎができるように、交通広…

「ゆいレール」は続くよどこまでも ⑦

帰りのゆいレールに向かう途中、その移住したとやらの人にメールをする。 「はじめまして。速水まやです。いろいろ相談して下さいね。 沖縄暮らしは長いので。あっ今度飲みに行きましょう。 関西人に愚痴も聞いてもらいたいし、 うまいツッコミ(*41)もい…

「ゆいレール」は続くよどこまでも ⑥

職場に戻り、ひとしきり雑務をこなしていると午後からの便が到着し始めた。 那覇空港には約三十分に一便と矢継ぎ早に飛行機が到着する。 到着するやいなや、まるで「ところてん」が押し出されるように 到着出口から人があふれ出てくる。 皆、何かしらの期待…

「ゆいレール」は続くよどこまでも ⑤

インフォメーションカウンターにも、ちらほらとお客様がやってきた。 たいていは同じ質問ばかり、 「トイレはどこですか?」とか 「レンタカーの受付場所は?」とか 「タクシーの乗り場は?」 「ゆいレールはどこから?」などなど、 すっかりベテランの私は…

「ゆいレール」は続くよどこまでも ④

はたして夏の終わりはいつなのか? 沖縄に暮らすとその境目がわからない。 例えば、木々がほんのり赤く色付き始めるとか、 かるく羽織るものを手にする人を見かけるだとか、 スーパーに松茸が並ぶだとか、 秋刀魚が無性に食べたくなるだとか、 無性に人恋し…

「ゆいレール」は続くよどこまでも ③

私の仕事場は那覇空港のインフォメーションカウンター、すなわち空港案内係。 今日のシフトは一階の到着ロビーのカウンター。 主な仕事内容はトイレの案内やバスやタクシーやレンタカーなどへの乗り継ぎ案内のようなものばかり。 朝の九時からカウンターに座…

「ゆいレール」は続くよどこまでも ②

那覇空港駅(なはくうこうえき) 沖縄の玄関口、出発駅。日本最西端の駅。 ゆいレールの出発駅となる那覇空港駅は、空港から専用の連絡通路で直結しており、 観光客や出張で来沖する旅行者を公共交通機関のゆいレールへとスムーズに導きます。 沖縄県民にと…

「ゆいレール」は続くよどこまでも ①

――当機はまもなく、沖縄那覇空港に着陸いたします―― 「ゆいレール」 正式名称は沖縄都市モノレール線。 沖縄本島の玄関口である「那覇空港駅」を出発し、緑豊かな風景に包まれながら、 日本最南端の駅である「赤嶺駅」を経由して「小禄駅」、「奥武山公園駅…